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As「始まりの記録」(箱庭助手団「教書」より)

 

それは何処が終焉を迎え、

何処が開幕を遂げた事が切っ掛けであるかは解らないが、

この世かあの世か、

はたまた別の何処かに

突如

白く、四角い「箱」が誕生した。

 

その「箱」を用意したのすら

誰なのかも解らないが、

後にその「誰か」は「ハッター」と呼ばれる事になる為、

此処でもそう記されせて頂こう。

 

ハッターはその四角い箱に、

「星」と「夢」を詰めた。

そしてそれらを、箱の隅々にまで行き届かせるために箱を掻き雑ぜると、

その箱はまどろみ「廻転」という概念が生まれた。

 

「廻転」が生まれた事により、

時間、生命、あらゆるモノが廻りはじめ

箱は「世界」となったわけだが、

ハッターは、それを更に「自身が望む世界」にするべく“同志達”を呼んだのだ。

 

“同志達”とはハッター自身と同じ存在であり、経緯は違えど同じ望みを持つ者を指し、

その同志達と共にこの箱を使ったのならば、

よりハッターの望む世界を創り上げられるに違いないからだ。

 

ではどのようにして同志達を呼んだのか。

それは、

ある「歌」を歌い、

その歌詞を持って同志達を引き寄せたのである。

 

 

 

―そしてこの箱に

創造者ハッターを含めた12人の同志達が集い、

後に

アンネ・ゾンネの誇る「国王」という名の

「魔法使い」として、

この「箱」を「自身が望む世界」へと造り立て始めたのである。

 

 

 

同志達の望む事は

ハッターの望む事であり、

その望みはこの世界を「望まれる世界」にすべく望ましいものであるため、

各々-おのおの-に望むモノを箱の中へと叶えてのけた。

 

ある同志は木々や花を拵え。

ある同志は鉄鋼を生んだ。

ある同志はこの箱に熱を齎し-ほどこし-、

ある同志はその箱に冷却を齎した。

 

各々の望みを叶えるには、

互いの望みとぶつかり合うわけにはいかない。

異なる望みを叶えるには境界線が必要となり、各々は箱庭を区切って使う事を決めた。

 

望みは廻転ごとに叶い、

各々の周りは、かつて望んだもので埋め尽くされた。

そして更に廻転した先に、

望みの境界線は「国境」となり、

「国」と称されるようになった。

同志達の1人が望みを叶え造り上げた「生命」によって。

 

 

 

 

 

 

~中略~

 

ふと瞼を閉じ、

また開いた其処には

もう「箱」はなく。

あるのは立派な「箱庭」であった。

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